昔話学校編5 母親が統合失調症の生徒に関わりました。  20160321

五十嵐です。昔話に少しお付き合いください。

2016/3/21

 今から10年以上前の話です。母親が統合失調症で父親が境界型という生徒に少し関わりました。本人とは中1の時の掃除当番の監督で接したぐらいです。その後不登校になり、3年生になりました。

  4月初め、母親から学校に電話がありました。担当の教師は転出していました。電話に出た教師が「担当のNは転勤になりまして・・・」と話したのを聞き、「え!やばいんじゃないか」と思いました。母親がパニックになるのではないかと思えたのです。父親は境界型で何度も自殺未遂をしたと聞いています。なにか危ないものを感じます。

  僕は生徒指導主事に「緊急事態だ!何とかしなくちゃいけない」と主張しましたが、全然わかってもらえません。終いには「こんな忙しい時に何を言っているんですか」と反発を食らいました。

  僕の思い過ごしかもしれません。でも、危機感を感じます。ヒューマン・ギルドの岩井さんに電話をしました。岩井さんは「緊急事態かもしれない」とわかってくれました。そして続けて「危機と感じた人が何とかしなければなりません」と言われました。

  しばらく考えました。家で夕食をとりながら、行動を決めました。僕は母親とは面識がありません。校長に電話をして説明しました。校長は母親と面識があります。もうお酒の入っている校長を迎えに行って、住宅地図を見ながらその生徒宅へなんとかたどり着きました。「こんばんは」と言ってもなかなか出てきません。でも中にはいるみたいです。携帯電話で家に電話してみました。ことんと音がしたので、戸をどんどんたたいて「こんばんは、中学校の校長の佐藤(仮名)です。」と僕が叫びました。

  戸がぱたんと開いた瞬間、校長を戸口に押し出しました。佐藤校長は「校長の佐藤です。元気かな?と思いまして」と話し、母親は「あっ、びっくりした」と言いました。

  安全を確かめてすぐに帰路につき、車の中で僕は校長に「僕の思い過ごしだったと思いますが、この家庭訪問はとても有意義なものだったと思います。」と言いました。

  何事もなくてよかったです。翌日、その母親の担当の県福祉職員に電話して、このことを話しました。県福祉職員は「お母さんは、家庭訪問してもらって安心して待っていられると思います」と言ってくれました。

  結果としては僕の思い過ごしでしたが、校長を動かしたことに誇りを持ちました。また、僕の言い分を聞いてくれた校長に敬意を払いました。